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委員会の活動を終えた俺は片付けを済ませ、席を立った。すると倫太郎がこちらにパタパタと駆けてきて、申し訳なさそうに声を掛けてきた。
「夏輝くん、先に帰ってて!三好先輩がまだ話したいことがあるみたいで…」
「わかった。俺も矢野に用事があったから丁度良かった」
「え!!!?僕も行きたかったよ〜!何かあったら絶対僕にも教えてね!」
「何もないけど………そこまで言うならわかった」
倫太郎越しに三好先輩を見ると、誰かと話していたが頻りに倫太郎のことを気にしていて、俺と目が合うと愛想良く微笑んでくれた。俺の視線が外れたのに気付いた倫太郎は振り向いて三好先輩を見る。
「三好先輩も…」
「ん?なに?」
「……えっ!!なに?僕なんか言ってた!?」
「いや、あんまり聞こえなかったけど…」
宗方の呟きを聞き返したが、本人も無意識のうちに出た言葉だったようであまり触れなかった。そうして俺は矢野が居るであろう職員室へと足を運んだ。
─ コンコン
「失礼します。」
ノックをして職員室に入ると、教師たちの視線を一身に浴びる。今まで不良というスタンスで授業を受けていた俺はマイナスなイメージがあるため、職員室に長時間滞在するのは気まずい。
「どうした?」
「矢野先生は…」
「矢野先生なら今は図書室にいると思うよ」
キョロキョロと矢野を探していると、近くにいた親切な先生が声を掛けてくれて居場所を教えてくれた。どうやら矢野は図書室をよく利用しているらしい。
普段あまり行かない図書室へやって来ると、想像以上の広さに溜息が出そうになる。棚がいくつも並んでいて奥行きがあるにも関わらず2階まであって、勉強スペースやパソコンも完備しているため探すのに苦労しそうだ。
「さすがに人も全然いないな…」
委員会終わりということもあり、利用時間があと30分に迫った図書室はガラガラでいつも以上に静かだ。
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