ヤクザ教師は隠したい

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寒さで震えていた体に温かいシャワーをかけると、ぶるぶるっと寒さが抜けていく。 一ノ瀬は大人しくお風呂場の椅子に座っていて、俺が洗ってあげるのを待っているようだ。人の髪を洗うのは久しぶりで、春歌が小さい頃はよく俺が髪を洗ってあげていたのを思い出す。 何事もなく一ノ瀬の髪を洗い終え、次は体を洗ってやらなきゃと風呂場を見渡して手を彷徨わせる。 「一ノ瀬、体ゴシゴシするやつは?」 「そんなのないよ。いつも手でやってる。」 「は!?」 別に人の好みだからなんだって良いんだけど、それがないってことは俺が今から手で体を洗ってやらないといけない訳で……。 「やっぱ一ノ瀬が自分で洗うってのは…」 「男に二言は?」 「ない……けど…」 言われるがままボディーソープをワンプッシュすると泡が出てくるタイプのやつでゴシゴシがないことに納得する。 背中にピトッと泡のついた手を当て、肌に泡を伸ばすようにして洗っていく。背中を洗い終えたところで俺はあることに気づいた。胸も、お尻も、そして息子さんも俺が洗うということなのか…?と。 「一ノ瀬さすがにもう…」 「洗ってくれるんだよね?」 「ゔっ……お前はそれで良いのかよ!」 「もちろん。」 ごくりと生唾を飲み込み、手を前に回して体に触れようとするができない。目がぐるぐるして顔が発火でもするように熱くなる。実のところ背中を手で洗うってところから俺のキャパシティを超えているのだ。 「やっぱりもう見ても……いいから。それは自分でやってくれないか……」 「じゃあ僕が夏輝の体洗ってもいいならいいよ。」 「なんでそんな意地悪するんだよ…もう、いいから…早く。」 こんなんじゃいつまでも恥ずかしいままだから、自暴自棄になって答えてしまった。この答えが自分の首を絞めるってことは俺が1番よくわかってる。だけど、一ノ瀬は潔癖っぽいところがあるから大丈夫だろう、と少し軽く考えていた。
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