ヤクザ教師は隠したい

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「一ノ瀬、人の記憶を消す方法って知ってる?」 「知ってたらどうする気?」 「もちろんお前の記憶を消す。」 「じゃあ夏輝だけがさっきのこと覚えてて僕のこと見るたび思い出しちゃうんじゃない?」 「は!?もう封印したから!」 話せば話すほど墓穴を掘っていくような気がして俺は口をギュッと結び、鼻下までお湯に浸かりブクブクと泡を立てた。 「上がる!」 しばらくして湯船からザバッと立ち上がると、視界が真っ暗になってフラつく。どうやらかなり長い時間お湯に浸かってしまったらしい。 「そんないきなり立つから…」 「悪い…」 一ノ瀬が体を支えてくれて、なんとかお風呂場から脱出することができた。 着る服もなくてバスタオルを腰に巻いていると、部屋着に着替えた一ノ瀬に手を引かれたので慌ててついていく。連れてこられたのは寝室で、さっきのこともあって少しだけ構えてしまう。 「服が乾くまでまだ時間かかるから、布団で少し休んでて。これ、入ると思うから。」 そう言って渡されたのは触り心地の良いスウェット生地のパジャマだった。ご丁寧に間にパンツも挟まれているが、これは一ノ瀬のものなのだろうか。 着る物も他にないのでそれに着替えるとピッタリサイズで、俺はベッドにポスンッと座って頭にタオルをかけた。 ◇ ◇ ◇ 「夏輝?…寝てるの?」 扉が開く音がして、扉の隙間から明かりが漏れてくる。しばらくするとその明かりは消えて、その代わりにベッドが少しだけ沈んだ。 「夏輝、」 誰かが俺を呼んでいる。けれど瞼が重くて上がらない。サラサラと優しく髪を撫でてくれるちょっと冷たい指先に擦り寄ると、上から小さく笑う声が聞こえた。 「おやすみ。」 そう言って誰かは俺の髪に優しく口付けを落とした。俺もその言葉に誘われるようにして、また夢の中へと落ちていく。
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