夏輝くんは選べない

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ところ変わってコンビニ前。久しぶりにお菓子のオススメ商品をパンダさんに聞きに行こうと足を運ぶと、文句を言いながらもついてきた赤ちゃん鴨が2人。 「僕があげたお菓子で満足できないの?」 「美味しかったからまだ食べたくて。槙田にもメロンパン買ってあげるから。」 「……なんで僕がメロンパン好きなの知ってるの。」 「いつも昼に食べてたから。…ほら、行こう」 槙田の腕を引っ張ると、顔を俯かせながら黙ってついてくる。凪はと言うと、なぜか俺の背中に身を潜めながら歩いている。入店するとお馴染みのメロディが流れて、「いらっしゃいませー」と無機質な声が店の奥から聞こえてきた。 「あ、ナツキ………と、その仲間たち?」 「お久しぶりです。」 「今ちょうどお菓子のポップ書いてたとこ」 出てきたパンダさんは相変わらずピアスがいっぱいで、片目は銀髪で隠れている。表情はあまり動かないが、俺を見ると少しだけ声色が柔らかくなった気がした。 パンダさんは値札のポップを書くのが上手くて、一言添えてあるのも俺が贔屓にしてる理由の一つだ。 「……ねぇ。もしかしてだけど、この人がセンパイの言ってたパンダさんじゃないよね?」 「え?そうだけど」 「この人、理事長じゃなかった?」 「え?」 槙田の衝撃の発言にまさかと思いながらパンダさんの方にゆっくり顔を向けると、「いえーい」と言って無表情でピースサインをしていた。 「えぇっ!?」 俺が1年の春に見た理事長はもっとダンディなイケおじって感じで、記憶の中の人物と全然一致しない。 「って言っても父さんが不在の間のこの1年だけ理事長を勤めてる代理だけど。」 「入学式で挨拶してたような……見た目がこのまんまで派手すぎる理事長って衝撃だったの覚えてる。」 「ちなみに春の始業式でも挨拶した」 「あ……俺、その始業式出てない………」 衝撃すぎる事実に空いた口が塞がらない。近所のお兄さん感覚で接していたから、何か失礼な事をしていないか頭の中の記憶を巡らせる。
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