偽不良くんは諦めない

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パシッと山本の拳を手のひらで受け止めて、山本の目を真っ直ぐに見つめる。 「そんなこと思ってねぇから安心しろ」 恐らく山本にしか聞こえていないであろうその言葉。周りから見たら俺たちはどう見えているのだろうか。 「イケメンかよ」 ヒッヒィと馬鹿にしたように笑う山本に「嫌味かよ」とすぐに言い返してやりたかったが、周りの視線がそろそろ痛くなってきたところだ。山本の拳を離して体育館へと向かった。 体育館の中は男どもで溢れていた。 それもそのはず。ここは男子校で、さらに言えば全寮制になっている。かなりの進学校の割には不良もちょろちょろいる。そして俺もその1人だったりする。この学校に入るために死に物狂いで勉強したのを今でも覚えている。 初等部や中等部もあり、エスカレーター式で上がる奴らもいるらしいが、高等部の2割ほどは外部生である。 「あ、俺あっちだわ。じゃーな!」 「おう。」 B組の席へ向かっていった山本の後ろ姿を見送ってから隣のA組の席へと向かう。1番後ろの端っこのパイプ椅子に座り腕を組んで目を瞑った。 「ちょっと、」 透き通った声が鼓膜を揺らし、俺は瞼を開けた。するとどこかで見たことがあるような生徒が俺を見下ろしていた。きっと学校のどこかで会ったんだろうと思っていると、相手の眉間に皺が寄る。 「奥から詰めるのが常識。もしそこに座るんだったらそんな足開けて座るな。迷惑。」 綺麗系で物静かそうな見た目に反して人を馬鹿にするような言い方で言うそいつをギロリと睨みあげた。
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