偽不良くんは諦めない

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自分の部屋のドアを開け、椅子の上に鞄を置いてネクタイを解く。制服のままシングルベッドにダイブして、大きく息を吸ってゆっくり吐く。 「……つかれた。」 体育館へ行って帰ってきただけなのに疲れたのには理由がある。俺史上最高とも言える秘密事項でもあり、このことは高校に入ってから誰にも話していない。 今でこそ不良の地位を持っている俺だが、中学の頃はこんな筋肉も身長も声も恐れられる顔でさえも何1つとして持っていなかった。ヒョロくて小さくて声も高くて気も弱くて、それが周りから標的にされてしまう原因だった。 そう。俺は当時、所謂いじめられっ子という位置づけだった。泣いてばっかで抵抗もできない俺は中学2年の途中で登校拒否になった。 しかし、ある時気付いたのだ。周りは俺が弱いから虐めるのであって、俺が強かったらそんなことはしないと。それから筋トレもして、夜の街で喧嘩もして、もちろん最初はボコボコだったし怪我もたくさんしたけど要領を覚えてからは才能を発揮して勝てるようになってきた。 それと同時に勉強も始めた。同じ中学の奴がいそうにない高校にしようと決めてこの高校を選び、別に得意でもない勉強を必死になってやった。 無事高校に合格し、中学を卒業した俺は体も心も逞しくなっていた。金色に髪を染めてピアスも開けて高校デビューを果たしたのであった。
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