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返事は何もない。
やっぱり歓迎されてないじゃん。
辛くなって顔を上げた私の目に彼らの姿が今一度飛び込んで来た。
「ヒィッ……!?」
それは、飛び切りの笑顔を浮かべた何体ものマネキンだった。ソファに座っているのも食卓についているのも、どれもこれもみんなマネキン。一様に飛び切りの笑顔を浮かべてこっちを見ている。
「な……これ……え?」
言葉が上手く出てこない。
「えっと、私の新しい家族達よ。紹介するね、この人が私の新しい旦那でぇ……」
そんな私に一瞥もくれず、ニコニコしたままで彼女は紹介を始めた。
「ちょ……」
私が何か言おうとしても完全に無視。
ただ楽し気に「新しい家族」の紹介を続けていく。
「この人達が、私の新しい両親。優しそうでしょ?」
そして最後に、カズミは食卓の椅子に腰かけている若いマネキンの肩に手をかけた。
「で、これが……新しいユリコよ」
「……え?」
「このユリコはね、私の本当の親友よ」
「カズミ、何言って……」
「私が苦しい時にね、私を見捨てるような冷たい子じゃ無いの。いっつも私の気持ちに寄り添ってくれるんだぁ」
そう言ってひと際明るく笑った彼女の手には、いつの間にか赤茶けた色の刃をした包丁が握られていて……。
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