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しかし止まる直前、誰かに背中を押され、琉菜は前につんのめった。
バランスを崩して転びそうになった琉菜を、沖田がぽすっと受け止めた。
「だ、大丈夫ですか?」沖田の声が頭上から聞こえた。
「は、はいっ…!」琉菜は慌てて沖田から体を離した。
う、うわああなんだいきなりこんな展開!!
琉菜は恥ずかしいやら若干嬉しいやらで顔を赤らめた。沖田の顔を直視できず、今ので少し乱れた着物の裾を直す。
「原田さん、危ないじゃないですか」沖田が原田をたしなめた。
「ちょーっと手が滑ってな」
琉菜を転ばせた張本人・原田はにやりと笑った。どうやら素早く琉菜の背後に回って、文字通り”背中を押した”ようである。
原田は琉菜の耳元に顔を近づけると、小さく言った。
「まんざらでもないだろ?」
原田はさらににやっと笑い、琉菜は口を尖らせた。
「いきなりわけわかんないことしないでください!」
確かに、まんざらでもないけどっ!!
「琉菜さん」
沖田の柔かい声に、琉菜は振り返った。
「おかえりなさい」
久しぶりに見る、懐かしい顔。
あいかわらず無邪気なその笑顔に、琉菜は深い安堵感を覚えた。
「はい。ただいま帰りました」
琉菜はにこっと微笑み、沖田をまじまじと見つめた。
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