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幕府のためにまさに文字通り身命を賭してきたこの男に、「幕府はおしまいです」などと言えるはずもない。
近藤は琉菜をじっと見つめると、その場をあとにした。
大政奉還の話は、夜には隊中に広まっていた。
「おい、幕府はなくなっちまうのか?」
「まだそうと決まったわけじゃねえ。上様は、政治に慣れてない朝廷のことだから、すぐに政権を返上するだろうと踏んでるらしいぜ」
「せっかく幕臣になったのになぁ」
「これからどうなるんだろうな」
夕食の時は、そんなふうにいろいろな隊士があちこちで同じ話題を話していたので、琉菜の耳にはタコができそうだった。
大政奉還……それさえなければ、新選組も報われたのに。
まあ、大政奉還がなかったら薩長がそのまま武力討伐に乗り込んでたんだろうけど。
じゃあ、大政奉還はいいのか……いいとして……
新選組が日の目を見るルートはどこにあったんだろう。
いや、最初からそんなものなかったのかも。
どこに行っても行き止まりの迷路みたいなものなのかもしれないな。
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