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琉菜はいろいろと考えをめぐらせたが、やっぱり、この先の新選組のことを思うと、胸がはりさけそうだった。
どちらにせよ、琉菜のようなただの賄い方にできることなどあるはずもなく。
あとはもう、歴史の流れに身を任せるしかないのだ。
琉菜は大きく溜め息をついて、食事を口に運んだ。
***
そして十一月になり、土方が隊士を連れて帰還した。
江戸は将軍の膝元であり、徳川への信頼をよせる者も少なくないだろうということで、新入隊士は難なく集まる見込みだった。今なら漏れなく幕臣になれるという特典付きだ。
だが、そんな特典はもはや無用の長物であった。
結局、目標としていた人数を集めることはできなかった。それはそれで残念なことであったが、旅の途中で大政奉還の話を聞きつけた土方は、もはやそれどころではないと言わんばかりに機嫌が悪かった。
そんなある日、買い物に行こうと琉菜が町を歩いていると、「琉菜ちゃん!」と琉菜を呼ぶ声がした。
だが、あたりを見回してみても声の主は見付からない。
そしてやっと、小さな路地で手招きしている男を見付けた。
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