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「ありがとな、琉菜ちゃん。参考になったぜよ。それじゃ、わしゃあ行くきに」
「はい。久しぶりに話せてよかったです」
「わしもじゃ」
琉菜は坂本をじっと見た。
幕末最大の謎、坂本龍馬を殺した男の正体を琉菜は自分の目で見たいと一瞬思った。
しかし、そんなことは不可能だ。
これ以上坂本さんに深入りしたら今度こそ新選組を裏切ることになる。
それだけは、やっぱりできない。
「バイバイじゃ、琉菜ちゃん」
「はい、あの……気をつけてください。今度の、十五日」
琉菜は思わず坂本に忠告してしまった。
そんなことをしたところで、何が変わるというわけでもないのに。
坂本が琉菜の言葉を察したのかはわからないが、にっと笑ってその場を去った。
琉菜はおそらく最後になるであろう坂本龍馬の生きている姿を、じっと見つめていた。
この目に、焼き付けておきたい。
幕末史上最も有名で、偉大な志士を。
さよなら。坂本さん。
数日後、新選組に坂本龍馬と中岡慎太郎が暗殺されたという知らせが入った。
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