22.大政奉還、そして……

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「新選組に疑いがかけられている」  局長室で近藤に書類を見せながら土方が苦々しく言った。  琉菜は二人の前にことんとお茶を置いた。 「そんな。新選組は昨日の夜は全然反対方向の巡察だけで、あとはみんな屯所にいたじゃないですか」 「しらばっくれやがって」土方はつまらなさそうに言った。琉菜は首を傾げた。 「お前は全部知ってるんだろ」 「知りません」琉菜はきっぱりと言った。 「坂本龍馬を殺したのは誰かっていうのは、この時代一番の謎として、未来でも有名です」  本当のことだ。  今になっても、坂本を殺したのは、誰か、明確な答えは出ていない。  見廻組だという説が有力だが、それを言えば「先を越された」と土方を余計ヒートアップさせることがわかっていたから言わなかった。  そして新選組の仕業だという説は多くの研究で否定されており、土方や近藤の様子から、琉菜はそれを確信した。 「へえ、そうかい」土方はどうでもいいというふうに相槌をうった。
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