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数日後、近藤・土方は屯所の近くの店に伊東を招き、酒宴を開いた。
もちろん、そこから始まる一連の事件に、琉菜が入る隙はない。
そもそも琉菜の任務は今、専ら沖田の看病である。今夜起こることを知らせず、悟らせず。運がいいのか悪いのか、この日沖田の体温は三十八度越えであり、琉菜は沖田に活動禁止令を出していた。
「沖田さん、気分はどうですか?」
琉菜は薬を持って沖田の部屋に入った。
今日の薬は、ただの咳止めである。解熱剤ではない。申し訳ないとは思いながらも、今は熱を出して寝込んでくれていた方が好都合だ。
今夜起こることを、沖田にはしゃべってはいけないことになっていた。言えば、無理をする。
近藤と土方は御陵衛士つまり伊東一派を一掃する計画を立てていた。
訳なら、ある。伊東は近藤の暗殺を企てていたのだ。やられる前にやってしまおうと、先手を打つための作戦である。
「昼間よりは楽になりましたが……琉菜さん。今晩は、荒れますね……」
こんな時に限って、沖田は鋭かった。普段だって鈍いわけではないが、こんな時にそんな力を発揮しなくても、と琉菜は内心焦った。
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