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琉菜は有無を言わせず自室に戻った。
自室の隅には、刃引き刀がしまってあった。近江屋に行った時女将に預けてそれきりだったが、巡察に出た永倉に取り返してきてもらったのだ。
いざとなったら、沖田さんを守る。
いざとなったら……
……藤堂さんを、助ける。
琉菜は素早く袴に着替えた。
刃引き刀を腰に差すと、屯所の裏口に向かう。
沖田も、寝間着の着流しではなく、きちんとした袴に着替えていた。
提灯の薄明かりしかない宵闇。沖田の顔色の悪さは良くも悪くも隠れていた。
「行きましょう」沖田は静かに言った。
「沖田さん」
「なんですか?」
「藤堂さんを、助けてください」
ただでさえ青白い沖田の顔が、さらに蒼白になるのが琉菜にはわかった。
「わかりました」
沖田は、それだけ言った。
山崎さん、あたしもやってみます。
”仮説”が覆るかどうか。覆してみせる。
藤堂さんを、死なせない。
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