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事件の舞台となる七条油小路は、屯所から程近い場所にあった。
十分か十五分も歩いたかと思うと、大きな声や刀と刀がぶつかり合う音が聞こえてきた。
もう始まってる。
琉菜と沖田はさらに近づいた。
月が、ちょうど天高く昇っていた。少しは明るい。
新選組隊士らは、黒い隊服に身を包み、姿がよく見えない。だが、十人はいる。対する御陵衛士の者たちは、少し少ないようだ。
十字路の角には、男が打ち捨てられるように横たえられていた。目を凝らしてみると、それは伊東の亡骸であった。
刀の音がキン、キンと大きく響いた。
新選組側は永倉、原田、斎藤らがいる。
御陵衛士の方には琉菜が屯所で何度も会った加納、篠原など。そして、藤堂もいた。
藤堂さん、お願いだから死なないで。
逃げて。
その時、琉菜は背後からの足音に振り返った。
「局長、土方さん……!」
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