23.油小路にて

9/12
前へ
/483ページ
次へ
 でも、違う。  沖田さんは、近藤局長の隣で、武士として刀を振れるのが、嬉しくてしょうがないんだ。  連れてきたのは、正解だったのかな。  史実だと、もう、この時点で沖田さんは戦いの記録から姿を消している。  あたし、歴史を変えられた……?  それなら、もしかしたら……!  沖田の話し声が聞こえ、琉菜はハッと我に返った。 「三浦さん、ここは私が!永倉さんの方に加勢して下さい!」  沖田は藤堂と戦っていた三浦という隊士を戦線から離脱させた。三浦は「承知」と言ってこくりと頷くと沖田と交代した。  キン、と沖田と藤堂の刀がぶつかりあった。  藤堂さん、逃げて……!  琉菜はその光景を見ながら、拳をぎゅっとにぎりしめた。 「沖田さん、久しぶりですね」藤堂ははあはあと息を切らせた。 「藤堂さん、逃げてください」沖田は静かに、だがしっかりとそう言った。 「嫌です」
/483ページ

最初のコメントを投稿しよう!

359人が本棚に入れています
本棚に追加