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「そんなこと言ってる場合ですか!」思わず叫んだのは琉菜だった。物陰に隠れていろ、という近藤の指令をあっさり破ったが、構っている場合ではない。
藤堂は琉菜に気付き、小さく微笑んだ。
「琉菜さん、また会えてよかった」
「逃げてください!!」琉菜は再び叫んだ。
「藤堂さん、早く!」沖田も続けた。
藤堂は柔かい笑みを漏らした。
「仲間が戦ってるのに自分だけ逃げるなんて士道不覚悟。そうでしょう?」
すると藤堂は一歩下がってから沖田に刀を向けた。殺気が漂っている。
そして、二人の刀が再び重なった。
「手加減しないでください。沖田さんの腕前は、こんなもんじゃない」
沖田は何も言わなかった。
時が止まったように見えた。琉菜には、二人以外目に入らなかった。周辺では未だ激しい死闘が繰り広げられているが、その喧噪は琉菜の耳には入らない。
沖田は微動だにせず、ぎりぎりと藤堂の刀を受け止めながら、再び、小さく、だがはっきりと「ここを離れてください」と藤堂に懇願した。
その時だった。
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