23.油小路にて

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 三浦は、近藤らの様子に困惑していた。  自分は沖田を助けたつもりなのに、一体何が起きたのだろうとでも言わんばかりだ。  そしてただおろおろと数歩下がり、駆け寄ってきた幹部たちに場所をあけることしかできなかった。  誰を恨むこともできない状況の中、琉菜は胸がしめつけられる思いで近藤たちの少し後ろに立っていた。 「バカ野郎!どうして逃げなかったんだ!」近藤が涙ながらに藤堂の上半身を抱き上げた。 「近藤……先生……いいんです……こうして、最期に……みんなに会えたんだから……」藤堂は蚊の鳴くような声で言った。 「藤堂さん……!」沖田が身をのりだした。 「平助、死ぬな!」土方も叫んだ。 「しっかりしろよ!」原田は泣き声で言った。 「よかった……会えて……」藤堂は目だけを動かして、仲間の顔を順順に見た。 「先に行って……山南さんと一緒に待ってます……」  藤堂は、ゆっくりと目を閉じた。 「平助え!!」  全員同時に、名を呼んだ。  しかし、応えが返ってくることはついになかった。  琉菜は何も言わずに、大粒の涙をぼろぼろ流しながら、そこに立ち尽くしていた。
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