24.翻弄

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 琉菜はそのあとの近藤の話を黙って聞いていた。  本で読んだとおりの歴史が、今ここで起こっている。 「上様は大阪城に入られた。我々は二条城の留守居を守ることになった。名前も、新選組ではなく新遊撃隊に改められた」 「新選組は、なくなったんですか……」沖田の表情が曇った。 「そういうことじゃない。ほら、壬生浪士組が新選組に変わったときのようなものだ。名前は変わっても、我々のやることは変わらない」  沖田は安心したように微笑んだ。 「二条城か……じゃあ支度しなくちゃいけませんね」 「お前が出ることはない。永倉くんたちに任せておくから、総司はゆっくり休みなさい」  その言葉を効いて、沖田は何も言わずに、ただ不満そうな顔をして、近藤を見つめた。  近藤は、何か言いたげだった。  だが、言わずに部屋を出ていってしまった。  結局、「新遊撃隊」の名前はわずか数日で返上し、あっと言う間に慣れ親しんだ「新選組」に戻った。  この、なんともフラフラとした感じが、もう今まで通りではいられないのだということを象徴しているようで琉菜はなんともいえない不安感に襲われた。  だが、それを顔に出せば沖田にも伝播し、体調にもよくない。
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