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「土方さんが忙しいのはわかってます。でも、これから伏見に行くんなら、もっと忙しくなると思って……」
琉菜は息を吸った。
「あたしと、勝負してください」
土方は目を丸くして琉菜を見た。
「そういえば、そんなこと言ってたな。だが俺は今忙しいんだ。お前の相手してる暇はねえ」
「そんなこと言わずに……!伏見に行ったらそれどころじゃなくなっちゃうかもしれませんし。十分……いや五分で終わりますから」
「その『分』てのはなんだ」
「いや、えーと……四半時のさらに半分くらいです」
土方は考え込むような仕草をした。それから、やがて「しょうがねえな」と呟いた。
「伏見に向かって出立するのは四日後だ。その前日。三日後の午後の稽古の時に道場に来い」
「ありがとうございます!」琉菜はぱっと笑った。
琉菜は副長室を出ると、道場に直行した。
絶対に、勝つ。
その日のために、あたしは稽古を重ねてきた。
未来でも、日本一の女子高生になるまでがんばった。
今なら、きっと勝てる。
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