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誰もいない道場で、琉菜は木刀を振っていた。
明かりはろうそくの火だけ。
視界は悪いが、そんなことはおかまいなしに琉菜は一心不乱に素振りをしていた。
あと三日で何かが変わるとは思えないけど、あと三日だけがんばって、あたしの技を完璧にしてやる。
そうして稽古をしていると、誰かが道場に入ってきた気配がした。
「稽古は順調ですか?」
「沖田さん!?」
琉菜は木刀を放り出して駆け寄った。
「今日は熱があるんですから、寝てなきゃダメじゃないですか!どうしてここに?」
「厠に行こうと思ったら、副長室から琉菜さんの声がして、その、すいません、立ち聞きしちゃって……」
「そんなことどっちでもいいんです!早く寝てください!」琉菜は沖田ににらむような視線を浴びせた。
「寝ませんよ。今日は、琉菜さんにとっておきの稽古をつけてあげようと思って」
薄暗い中でも、沖田が微笑んでいるのがわかった。
琉菜は不思議そうな顔で沖田を見つめた。
「とっておき……?」
「はい。琉菜さんに、天然理心流の必殺技を教えてあげようかなって」
琉菜は黙りこくった。
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