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沖田が修めた天然理心流。
もちろん、習ってみたいとは思う。
だが、それは沖田に無理をさせることとなる。
だったら、断固断るべきだ。
「無理です。沖田さんに無茶させるわけにはいきません。それに、どーせあと三日でできるわけないし」琉菜はぷいっと顔を背けた。
「大体、教えてくれるなら、なんでもっと早く、元気なうちにそうしてくれなかったんですか。いきなり今日から始めたって、何にもいいことありません」
「すいません……琉菜さん、最近ますます強くなってきてたから、そのままでも大丈夫かなぁ……とか……」沖田は気まずそうに言った。
「でも、実際土方さんと勝負するとなったら、やっぱり飛び道具を一つ持っておくのもいいんじゃないかなって。だってほら、土方さんは琉菜さんの太刀筋は何度も見てますから。ここは、土方さんの知らない琉菜さんの剣を身につければ、意外性が出て、隙ができるかもしれませんよ」
とうとうと説明する沖田を琉菜はじっと見つめていたが、しっかり聞いているわけではなかった。
「お気持ちはありがたいですけど、部屋に戻って寝ててください。天然理心流なら今度別の人に教わりますから」
「それじゃあ試合に間に合わないでしょう」
「もともと間に合いませんよ」
「そんなこと言わずに。半時だけ。ね?」
なぜか教える側の沖田が「お願い」と手を合わせているのを見て、琉菜はなんだか可笑しくなってきた。
「じゃあ、沖田さんは一切動かないで下さい」にらみあいの末に、琉菜は名案だとばかりに言った。
「奥に座ってもらって、口だけであたしにやり方を指示してください。そしたら、あたしは勝手に動きますから」
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