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「てめえ、いつの間に身につけた」土方の顔にほんのわずかだけ焦りの色が浮かんだ。
「ずっと前です」琉菜は短く答えた。
この構えこそ他でもない、三日前に沖田につけてもらった秘密の稽古の成果である。
天然理心流の構え・平晴眼。
琉菜は今まで流派にこだわったことなどなかった。
現代の高校の剣道部くらいでは、流派も何もない。
そして、そのままこの時代で稽古をしていたのだから、それも当然である。「ずっと前」そう答えたのはもちろんハッタリだった。
普段の実戦で足掛けやハッタリを使いまくっている土方に、この作戦を使うことに対しては、琉菜は何の罪悪感もなかった。
「じゃ、行きます」琉菜は静かに言った。
土方も構えた。
平晴眼に構えたら、そのあとは突きである。
土方も、それを見越し、間合いをあけて身構えた。
琉菜はダダダッと数歩入った。
土方は突きに備え、顔の前に木刀を構えた。
だが、琉菜は突くと見せかけ、予想通り構えた土方の隙をつき、胴を思いっきり打った。
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