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初めて土方と戦ったこと。
沖田に稽古をつけてもらったこと。
二度目の敗北で、必ずもう一度戦うと約束したこと。
中富新次郎として、男扱いの稽古を受けたこと。
初めて真剣をふるって、人の命を奪ったこと。
三度目のタイムスリップで人は斬らないと土方に誓ったこと。
そして、今の勝負のこと。
琉菜は俯いたまま、肩をわなわなと震わせた。
感極まって涙が零れてくる。ぐいっと、稽古着の袖で拭った。
土方はきまりが悪そうに琉菜を見ると、珍しくこんなことを言った。
「まあ、よくがんばった。まさか本当に俺に勝てる日が来るなんて思わなかったぜ」
琉菜は顔を上げた。
目の前には土方の顔。
こんなに優しい顔をした土方を、琉菜は今まで見たことがなかった。
端正な顔立ちが、よりいっそう際立っている。
「だが」土方は表情を元に戻した。
「実戦なら、俺が勝つ」
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