26.伏見へ

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26.伏見へ

 試合が終わった後、琉菜は来たる引っ越しに向けての荷物の整理という仕事にかかりきりとなった。  せっかくわざわざ新選組のために建てた屯所なのに、半年でおしまいなんて、なんかもったいないなあ。  この屯所、ずーっとずーっと残しといてくれてたら、未来でいい観光スポットになったのに。  まあ、ホテルの方が儲かるか。  不動堂村の屯所がある位置には、ここから約百年後にはホテルが建つというのが歴史である。  琉菜は頭ではのんきに屯所の行く末を考えながら、体はてきぱきと動かし、必要なものをどんどん運び出していった。  次の日、新選組は荷物をまとめて不動堂村屯所の前に集まった。  隊士の人数は、この数日間でいささか減少していた。  この時代の侍ともあれば、大多数が「戦、バッチ来い!」という心境なのであるが、一部の人間は本格的な戦が始まりそうだという事実に恐れをなしたのか、少数ではあるものの脱走者が出ていた。
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