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「木内さん、いろいろとありがとうございました」琉菜はお礼を述べた。あくまで、中富新次郎の妹として。
「琉菜さん」木内は、声を潜めて琉菜にしか聞こえないように言った。
「俺、中富のこと、本気で探してみようと思ってます。消息がわかったら、琉菜さんにもお知らせしますから」
琉菜は、嬉しいような、申し訳ないような、なんとも言えず、えっ、っと息を呑むことしかできなかった。
「あの、ありがとうございます」
罪悪感で胸が締め付けられたが、なんとかそれだけ言った。木内は満足そうに頷いた。
全部が落ち着いて、明治になったら、木内には本当のことを言ってもいいかな……
びっくりさせるかもしれないし、そもそも信じてもらえないかもしれない。怒るかもしれない。
考えあぐねていたが、ちょうど土方の声がかかり、琉菜はそちらに注意を向けた。
「全員揃ったな。それではこれより、伏見奉行所に向かう」
承知、と全員が返事をし、新選組の隊士らは不動堂村の屯所を後にした。
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