26.伏見へ

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「木内さん、いろいろとありがとうございました」琉菜はお礼を述べた。あくまで、中富新次郎の妹として。 「琉菜さん」木内は、声を潜めて琉菜にしか聞こえないように言った。 「俺、中富のこと、本気で探してみようと思ってます。消息がわかったら、琉菜さんにもお知らせしますから」  琉菜は、嬉しいような、申し訳ないような、なんとも言えず、えっ、っと息を呑むことしかできなかった。 「あの、ありがとうございます」  罪悪感で胸が締め付けられたが、なんとかそれだけ言った。木内は満足そうに頷いた。  全部が落ち着いて、明治になったら、木内には本当のことを言ってもいいかな……  びっくりさせるかもしれないし、そもそも信じてもらえないかもしれない。怒るかもしれない。  考えあぐねていたが、ちょうど土方の声がかかり、琉菜はそちらに注意を向けた。 「全員揃ったな。それではこれより、伏見奉行所に向かう」  承知、と全員が返事をし、新選組の隊士らは不動堂村の屯所を後にした。
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