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沖田は、その一団からは離れ、奉行所の一番奥にある部屋で療養していた。
「伏見まで来て、私は何をしてるんでしょうかね」
「療養に決まってるじゃないですか」
琉菜は沖田の看病に専念しろと土方直々に言われていた。「ちゃんと面倒みるんだぞ」と、土方が少しにやりと含み笑いをしたのを、琉菜は思い出した。
「療養なんかしなくたって平気なのに」沖田はぶすっとした目で天井を見つめた。
「どこがです?」琉菜は、今しがたピピッと音と鳴らした体温計を見た。
「三十七度七分。熱あるじゃないですか。水と手ぬぐいもってきますね」
琉菜はすくっと立ち上がり、部屋を出た。
その姿を、沖田は布団の中から疲れたような顔で見上げた。
沖田さん、最近熱が下がりにくくなってきてる。
やっぱり、この前熱があるのに道場にいさせたのが悪かったのかな……
歴史通りの命日まで、もたなかったらどうしよう。
……ううん、持たせてみせる。
あたしが、がんばらなきゃ。
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