26.伏見へ

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 二日後。  琉菜が中庭で洗濯物を干していると、見覚えのある男が息を切らせてやってきた。 「琉菜さん!」 「尾形さん、どうかしたんですか?」  尾形というのは監察方の一人で、山崎と一緒にいつも仕事をしている隊士だった。 「近藤局長が撃たれました」 「局長が……!?」琉菜は蒼白な顔で言った。  近藤は、二条城での会議から伏見へ戻る途中、伊東一派の残党によって狙撃されたのだ。  わかっていたことだったが、いざその事実を突きつけられると、やはり頭は真っ白になるものだ。  琉菜はなんとか気持ちを落ち着かせて、尾形の次の言葉を聞いた。 「これからこちらに運ばれてくると思うので、手当ての用意をお願いします」 「はい」  尾形は「ありがとうございます」と一言だけ言い、踵を返して行ってしまった。  それから間もなく、門の方が騒がしくなってきた。
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