26.伏見へ

12/12
前へ
/483ページ
次へ
 そう思っても、琉菜はそれを声にすることができなかった。 「俺はこの時代にこれた、山崎烝になれた、それで満足してるんや。お前は違うんか?」  琉菜は無意識に首を横に振った。  そうなんだ。  この時代に来れた。  本物の新選組に会えた。  それだけで、十分だ。わかってる。わかってるけど。 「そういうことや。俺は最後まで山崎烝として生きるさかい、そないな顔すんなや」 「……はい」 「ほな。俺はもう行かなあかん」 「はい。あの、気をつけてください!」  山崎はにっこりと微笑むと、踵を返して行ってしまった。  琉菜はその背中が見えなくなるまで、ずっとそこに立っていた。
/483ページ

最初のコメントを投稿しよう!

359人が本棚に入れています
本棚に追加