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「調子はどうですか?」
「別に変わったことは……」
「それならよかった。悪くならないのに越したことはありませんから」
それは、もう治りません、と暗に宣告しているようなものだった。
沖田は「そうですか」と力なく微笑んだ。琉菜はそんな沖田を直視できなかった。
あと百年もすれば、結核なんて治っちゃうのに……。
琉菜はやり切れない気持ちで二人の会話を聞いていた。そのうちに、夕食の支度をするから、と二人を残して部屋を出た。
バタン、と後ろ手にふすまを閉め、琉菜はふう、と息をついた。
「結核の馬鹿やろう。幕末医学の馬鹿やろう」
誰にも聞こえない小さな声で、琉菜はそうつぶやいた。
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