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この日、琉菜は十数人の観光客を連れて、屯所の跡地に建っているホテルに入っていった。
慣れた足取りで二階に上がると、宴会場に入っていく。
「このあたりが、幹部の部屋が並んでいたあたりになります。あちら側が局長室。不動堂村の屯所になってからは、近藤勇は外出も増えていたのであまり使われることもありませんでしたが、隣に土方歳三の部屋もあって、よく互いの部屋を行き来していろいろ話し合っていました。沖田総司はそちらの奥の部屋で療養していたのですが、よく抜け出して稽古に行くものだったから、お世話役の賄い方にしょっちゅう怒られていました」
観光客は、へえ、とか、ほう、とか言いながら宴会場の中をふらふらと歩き回った。琉菜はその様子を見ながら、あの頃のことを思い出す。それはもう、夢だったのではないかと思えるほど、現実味のない、でも、鮮明な記憶。
そういえば、土方さんの部屋にお茶を持ってったら茶柱が立ってて、珍しく褒められたこともあったっけ。
思い出すのは、何気ない、日常の一コマだ。
局長、土方さん、総司さん。
あなたたちは、こんなにも未来で愛されていますよ。
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