epilogue3.誠の未来へ(最終話)

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 女性は「なるほど」と頷きながら聞いていたが、「でも」と納得していなさそうな声を出した。 「五月三十日って沖田総司を看病していた女中さんの日記しか根拠がないらしいじゃないですか。例えば、その人的には五月三十日で沖田さんが意識を失ったりしたことで事実上死んでしまった、ということで日記に書いただけで、本当は六月五日まで生きていたんじゃないかなって」  う、鋭い……  あなた、歴史の研究者に向いてるかもよ。  事実、歴史は「ほぼ」変わっていなかった。琉菜の日記は、どうやら関東大震災か第二次大戦でのごたごたで、詳細はわからないが紛失されてしまったようだった。それでも、あれから数十年は残っていたようで、その記録を元に二次資料本やフィクション作品が作られ、五月三十日説が確固たるものとなっていた。しかし、やはり琉菜がタイムスリップして変わってしまった後の命日「六月五日」も一説として残ってしまっていた。 「これは、沖田総司に近かった人の子孫から聞いた話なんですけどね」琉菜は切り出した。
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