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5.お酒は二十歳になってから
「話は終わりました?」
琉菜が縁側を歩いていると、沖田がこちらにやってきた。
「いったい何の話だったんです?」とは聞かなかった。土方がわざわざ琉菜を連れ出したくらいなのだから、聞かない方がいいと察しているようだ。
「大福、食べません?」
沖田は大福の包みを見せ、にこっと笑った。
「いいんですか?本当はあたしに買ってきたんじゃないはずなのに」
「まあ気にしないでください」
……すっごく気になるんだけど。
本当は誰と食べるつもりだったんだろう。
単に、一人でいっぱい食べるつもりだったのかな…。そう思うことにしよう。
琉菜と沖田はその場に腰掛け、庭を眺めながら大福を食べ始めた。
隣に沖田がいて、一緒にお茶をしながら他愛もなく近況報告をしている。琉菜はこの状況が信じられなくもあり、どうしようもなく嬉しくもあった。
だが、その幸せな時間には数分で水を差された。
バタバタと足音がしたかと思うと、「沖田先生!」と声がした。それは琉菜の聞き覚えのある声だった。
沖田はびくっと立ち上がると、大福を頬張ったまま辺りをキョロキョロと見回した。
「ふははん、ひへてくははい(琉菜さん、逃げてください)」
「え?」
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