少年

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「おっちゃん!なあ、おっちゃん!」 振り向くと1人の少年が立っていた。まだ23の僕をおっちゃん呼ばわりしてくるその少年に多少不快感を覚えながらも答える。 「なんだ、クソ坊主。僕に何か用か?道を聞きてえなら他を当たれよ。僕はここに来たばかりで土地勘はない。」 少年の表情からして道に迷っているわけではないことぐらいわかったが、煩わしいので早めに消えてほしい。 「ちげーよ。なあおっちゃん、おっちゃんさぁ、疲れてんだろ。だったらさぁ、これやるよ。」 意外にも冷たい僕の言葉を物ともせずに少年が差し出してきたのは石ころだった。 「この石はな、持ってるだけで体力が回復するんだぜ。だからさぁ、これ、やるよ。」 少年が魔法の石かのように僕に突きつけているのは、どう見たってただの石ころだった。たしかに普通の石より少し綺麗だが、それだけだ。でも、ここでガキ相手にそんなことを言っても時間の無駄だと思いこう答える。 「お、そうか。ありがとよ。これで明日も頑張れるぜ。」 それを聞いた少年は満面の笑みで、 「そうだろ!それ、俺の大事なアイテムなんだけどさ、おっちゃん疲れてそうだったから。それじゃあな!」 そうか、僕は初対面の少年から疲れてると思われるような歩き方をしていたのか。走って去っていく少年の後ろ姿を横目に、また家へと歩き出す。そういえば自分にも、なんでもないものが全部不思議な力を持った宝物のように見えていた時期があった。色々と集めてポケットに詰め込んで家へ持ち帰ると母から捨ててこいと怒られたが、どうしても惜しくて机の中に隠していた。あのガラクタはどこに行っただろうか。引っ越しの時に捨てたか?もしかしたらまだ机に隠されたまたかもしれない。帰ったら探してみるか。
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