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もうすぐ9月が終わろうとしているのに、着ている白いTシャツが汗でべっとりと体に張り付いている。
気持ちが悪い。
ニュースやら新聞で、異常気象の特集や記事が多くなったのも頷ける。
さっき通り過がりに道路脇に設置してある温度計を見たが29度と表示されていた。
「真夏じゃねぇか」
剣道の稽古を終えた俺は、1人悪態をつきながら道場から我が家へと自転車を走らせていた。
猛スピードで。
とにかく早く家に着かなければ。
俺は何がなんでも18時までに家に着かなくてはならない。
例え雨が降ろうと槍が降ろうと、この足を止めるわけにはいかない。
ペダルを踏み込む足にも力が入る。
もちろん、帰路を急ぐのにはそれ相応の理由がある。
万が一、家に着くのが18時をこえた場合大変なことになる。
俺の人生を変えてしまうかもしれない。
だからひたすらに自転車をこいだ。
一一一稽古が終わり更衣室で着替えたあとのことだった。日課のアプリを開こうとスマホを手に取ったところ、珍しい表示が画面上に出ていた。
『新着メッセージ1件』
これだけでも俺にとっては大ごとだ。
普段はまず誰からもメッセージなんてこない。
あり得るとすれば家族の誰かしらくらいだ。
かといって、友達がいないわけではない。
ただ連絡をよこす人がいないだけだ。
日々剣道に明け暮れているからな。
きっと遊びにも誘い辛いんだろうと俺は思っている。
家族にしても緊急時以外でメッセージがくることなんてまずない。
前回メッセージがきたのは3ヶ月前、じいちゃんが倒れたときだった。
俺は少し緊張しながらメールのマークをタップ。
差出人は妹だった。
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