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「あと3時間程で四魔天の皆さんが全員集まるはずです。準備が出来次第お呼びしますから、それまでは自室で仮眠を取っていて下さい。くれぐれも城内をうろつかないようにだけお願いしますね。ではご案内します」
そう言うと、レオンは俺に席を立つよう促す。
欲を言えば食後のデザートなんかを食べたかったが、名残り惜しい思いを胸に再びレオンの後について行った。
食堂を出る前に、俺は疑問に思っていたことをレオンにさりげなく聞いてみた。
「レオン、俺の容姿なんだけどさ。顔やら声やら、とにかく今の俺の姿って魔王と同じなのか?」
前を歩いていたレオンはピタッと足を止め、俺に振り返る。
「全く同じです。そうでなければとっくの昔に侵入者として扱われていたでしょうしね。容姿だけでなく、正義さんから感じる魔力も魔王様そのものです。それは以前にもお伝えしましたね」
「やっぱりそうなのか……」
どうかしたのですか、と首を傾げながら尋ねるレオンへ、俺は何でもないと首を横に振り自室への案内を促した。
地球の俺と、アルドラの魔王はやっぱり全く同じ容姿だったんだ。
魔力に関してはよくわからないが、そこまで同じなら他にもあらゆる部分が合致してたとしてもおかしくはない。
しかし、これを偶然というならやはり出来過ぎている。
俺と魔王の間に何かしらの関係があるようにしか思えない。
とは言え、その詳細は現段階では全くわからないのだが。
この世界にいればそのうちわかるのだろうか。
不安と謎がぐるぐると頭の中を交差する。
「さあ着きましたよ」
レオンの声にふと我に帰る。
考え事をしているうちにどうやら到着してしまったらしい。
見慣れた幾何学模様がビッシリと入った扉の前へとレオンが俺を誘導した。
「もう正義さんで解除できますよね。そもそも魔王様の自室は魔王様以外の解錠ができないようになっています。恐らく正義さんなら大丈夫かと思いますが……扉へ向かって解錠と念じてみて下さい」
レオンにわざわざ言われなくとももう分かってはいるが、俺は一度頷いたあと扉の前に立ち解錠を無詠唱で発動した。
扉は一瞬白く発光したあと音もなく開いた。
豪華な内装を想像していたが、部屋の中は至ってシンプルだった。
20畳程の広さで机と椅子、ベッドがあるだけ。
床は黒いが壁や天井は木目調となっておりモダンな雰囲気を出している。
魔王とは趣味が合いそうだ。
これならゆっくり休める。
「では3時間程したら起こしに参ります。それからの流れは会議に向かう途中で簡単に説明しますから、今はゆっくり休養を取って下さい」
「分かった、助かるよ。でもこの部屋って魔王にしか開けられないんだよな?どうやって俺を起こしーーー」
〈このように念話で起こしますからご安心下さい〉
頭の中に直接レオンの声が入ってくる。
なるほど、と俺は納得する。
これは念話と言われるもの。
ある程度離れた相手とも脳内で会話ができるたいった便利な魔法だ。
「ああ、そういうことね。分かった、じゃあまた後で」
その言葉に、レオンが軽く一礼して部屋から出て行く。
レオンが出て行き数秒すると自動的に扉がしまった。
それを見届けたあと、俺はフゥと大きく溜息をついて大きめのベッドに横になる。
ガシャンッ
あぁ、そういえば鎧着たままだった。
これどうやって外すんだろう。
起き上がって鎧のあちこちを調べてみると、脇腹あたりのところにホック式の留め具のようなものが付いていた。
左右3個づつついてあるソレを外すと、パカッと前後に鎧が開いた。
しかし軽いな。
改めて鎧の軽さに驚きを覚えつつも、ベッドの脇にそっと鎧を立て掛け、再びゴロンと横になる。
あぁ気持ちいい……
ベッドがこんなに気持ちいいものだったなんて。
今日一日……正確には昨日の夜になるのか。
振り返ってみれば、本当に濃い一日だったなとつくづく思う。
俺はこの世界で、本当に人間と魔族の戦争を和解終結させられるのだろうか。
そして、俺と魔王に何かしらの関係があるのだとしたら、一体どういう繋がりなんだろうか。
その前にまずは四魔天との会合だ。
果たしてレオン以外の3人は、俺を転生者として、魔王として受け入れてくれるのか。
そんな事を考えていると、だんだんと意識が遠のいていった。
どうか面倒なことになりませんように。
そう心の中で呟き、眠りに身を委ねた。
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