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白い時間
カイルはしばらく考えていた。
「ね、ケイト、固定観念は捨てようよ。ツアーに来たら、落第するという。そして、ツアー中は勉強出来ないっていう。それは妄想だ。
そして僕から、あえてお願いする。ヨーロッパツアーに来なくてはだめだ。」
ケイトは言った。
「それって、アランの差し金ですか?」
「えっ?、、、アランが僕に言わせてるって意味?鋭いね、やっぱり君は。流石、アランのガールフレンドだ。」
「やっぱりそうなんですか?」
「正確には違う。僕がアランの気持ちを読んだだけさ。」
「そう?」
彼女は、しばらくうつむいて考えていた。
カイルは言った。
「ま、彼が君に来てほしいと思うのは、たぶん君がいると彼が安定するからね。」
「そうですか?私役に立ってるの?」
「そう、みんな言ってるよ。ケイトが来てから、アランは安定してるって。
それもあるけど、今度は僕からの頼みだけど、ヨーロッパツアーは現地スタッフ沢山使わなくてはならない。国内の場合は、AZCから出てるから、波動管理、精神的コンディション管理というかな、は簡単だった。でも現地はそういうわけにはいかないんだ。」
「波動管理?白い部屋、白い時間という意味?」
「君はそう受け止めてるのか?そう、その白い透明な環境。イルミナの活動にはそれが基本だってわかるよね?それをマネジメントしなくてはならない。」
「それで、私は何をするんですか?」
「外枠は、つまり現地スタッフについては僕がマネジメントする。AZCのスタッフと一緒にね。君には内側、バンドの中をマネジメントしてほしいんだ。それが一番重要な部分だ。」
「えっ、私にそんな大役できるんですか?つまり、ネガティブを寄せ付けないってことでしょ。出来るのかしら、そんなこと。私は只の秘書で、事務専門ですよ。」
「出来るかどうかじゃないよ。やらなきゃいけない。そして君しかいない。」
「イルミナを守るってこと?女の私が?」
「ギリシャの神殿の巫女は女だよ。」
ケイトは突然笑い出した。笑いが止まらず、涙が出てきた。
そして思った。アラン以外の人にこんな笑うなんて。でもカイルは同じ笑いのツボに充てる。カイルって何者?
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