2人が本棚に入れています
本棚に追加
奇跡
カイルが、ケイトに視線を投げずに言った。
「ケイト、アランは恋人は作れないタイプだよ。姉への愛が強すぎてね。だから、自分を変えるために、アンジーと決別したんだ。だからね、ケイトは奇跡なんだよ。」
「奇跡?」
「そう、彼は、その愛を音楽に込めることにしたんだと思う。アンジーから独り立ちするにはそれしかなかったじゃないかな?
だから、今の彼には、他に心を奪われる相手は、邪魔だったはずだ。
でも、想定外のことがおこっているんだ。で、彼はそれを受け入れてるとおもうけど。
ケイト、自分の考えにばかりとらわれていてはだめだ。彼を信じた方がいい。
アランの君への愛は本物だと思うな。君は奇跡だよ、アランにとって。」
ケイトはまた涙を流し始めた。
「どうして、私は彼の愛をちゃんと受け入れられないのかしら。
分かっているのに。どうして素直になれないんだろう?」
カイルが優しく言った。
「トラウマも愛にたどり着く道だよ。ゆっくり自分を見つめて解決しなよ。解決したら、実りも大きい。荒海を乗り越えて、新大陸の目指すことだね。」
「その言葉かっこいい。そうですね。私たち、私とアランは同じテーマでくっついてるのかな?トラウマもち。」
ケイトは涙をぬぐって、微笑んだ。
「トラウマもち同士か?僕も似たようなものかも、、、、実は、心の底で、僕のライバルはアランだからね。これ、秘密だよ。」
「そういうわけなんですね。」
「そういうわけ。
ねえ、ケイト、そのトラウマね、何か奥に隠れていそうだね。
たぶん、君の人生のどこかで、愛とか、幸せとか、嬉しいとか、そういうポジティブな気持ちを否定したくなる、例えば、愛を拒絶されて心を閉じるとかさ、そんな経験を封印していて、そして、理由もなく、不可解なリアクションしてしまうんじゃない?
僕はインテリでないから、理論はわからないけど、今、君の、もう一人の君から感じるのは、そういうことだ。」
「もう一人の自分?」
「うん、封印されているケイト。」
ケイトは、涙のついたまつげの向こうのカイルを見つめて言った。
「カイル、あなたも不思議な人。そう、私、アランに会って、イルミナに来て、本当に不思議の国にいるみたい。
そうですね。 私は、その封印を解かなくては、この変な自分を解決できないですね。本当にありがとうございます。私に付き合ってくださって。あなたは優しいですね。」
最初のコメントを投稿しよう!