奇跡

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奇跡

カイルが、ケイトに視線を投げずに言った。 「ケイト、アランは恋人は作れないタイプだよ。姉への愛が強すぎてね。だから、自分を変えるために、アンジーと決別したんだ。だからね、ケイトは奇跡なんだよ。」 「奇跡?」 「そう、彼は、その愛を音楽に込めることにしたんだと思う。アンジーから独り立ちするにはそれしかなかったじゃないかな? だから、今の彼には、他に心を奪われる相手は、邪魔だったはずだ。 でも、想定外のことがおこっているんだ。で、彼はそれを受け入れてるとおもうけど。 ケイト、自分の考えにばかりとらわれていてはだめだ。彼を信じた方がいい。 アランの君への愛は本物だと思うな。君は奇跡だよ、アランにとって。」 ケイトはまた涙を流し始めた。 「どうして、私は彼の愛をちゃんと受け入れられないのかしら。 分かっているのに。どうして素直になれないんだろう?」 カイルが優しく言った。 「トラウマも愛にたどり着く道だよ。ゆっくり自分を見つめて解決しなよ。解決したら、実りも大きい。荒海を乗り越えて、新大陸の目指すことだね。」 「その言葉かっこいい。そうですね。私たち、私とアランは同じテーマでくっついてるのかな?トラウマもち。」 ケイトは涙をぬぐって、微笑んだ。 「トラウマもち同士か?僕も似たようなものかも、、、、実は、心の底で、僕のライバルはアランだからね。これ、秘密だよ。」 「そういうわけなんですね。」 「そういうわけ。 ねえ、ケイト、そのトラウマね、何か奥に隠れていそうだね。 たぶん、君の人生のどこかで、愛とか、幸せとか、嬉しいとか、そういうポジティブな気持ちを否定したくなる、例えば、愛を拒絶されて心を閉じるとかさ、そんな経験を封印していて、そして、理由もなく、不可解なリアクションしてしまうんじゃない? 僕はインテリでないから、理論はわからないけど、今、君の、もう一人の君から感じるのは、そういうことだ。」 「もう一人の自分?」 「うん、封印されているケイト。」 ケイトは、涙のついたまつげの向こうのカイルを見つめて言った。 「カイル、あなたも不思議な人。そう、私、アランに会って、イルミナに来て、本当に不思議の国にいるみたい。 そうですね。 私は、その封印を解かなくては、この変な自分を解決できないですね。本当にありがとうございます。私に付き合ってくださって。あなたは優しいですね。」
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