奇跡

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「そう、僕にだって苦しみはあるから、人の苦しみもわかるのさ。」 彼女は、ハンカチで涙を拭きながら、カイルの優しい波動の中に包まれていた。これって、抱擁と同じくらい温かい。 こんなカイルに愛されているアンジーは、彼の愛をどう感じているのだろうか? やっと気分が収まってケイトが言った。 「ありがとうございます。 で、アランにね、一応あなたに会うこと伝えてあるんですが、帰ったら、カイルと何話したかと聞かれるでしょ。そしてツアーに行くというでしょ。そして今の話、どうやって隠そう?彼には私の心は読めてしまうので。」 カイルは言った。 「今の話は二人だけの秘密にしようね。教えとくね。秘密の隠し方にコツがあるんだよ。まず、秘密を心の小箱に入れて、金色の鍵をかけて、その鍵を首から、ペンダントのようにつるして、そのこと忘れる。いいね?」 「過去を封印するみたいに?」 「ちがうよ。他人に見えないようにするだけ。いつでも鍵で開けて見れるよ。そうか、トラウマにも鍵があるのかもね?鍵を見つければ明くかもしれない。」 ケイトがつぶやいた。 「イルミナって秘密ばかりですよね?」 「そう、だけど楽しいだろ?他行きたい?元の世界に戻りたい?」 「いいえ、絶対に戻りません。ここは楽しくって離れられないです。」 本当、カイルは切り替えがうまい、とケイトは思った。。 「あっ、切り替わっちゃった。いつもアランが言ってます。カイルに助けられるって。わかった、今日その意味が。」 「僕は難しいこと苦手だけど、ポジティブに切り替えるのだけは、うまいんだ。過去に戻れないから、前進だけ。そう、いつも自分に言い聞かしてるから。」 ケイトが迫る。 「どうやってやるんですか?そのポジティブに切り替え方。」 「魔法だよ、カチって切り替える、光を描いて。ネガティブは光に勝てない。」 カイルは微笑んで、色白のふっくらした頬にえくぼを見せた。 「わかりました。すっかり、あなたの魔法にかかりました。私も魔法使いになりたいな。」 「うん、君には才能あると思うよ。」 二人は、やっと楽しそうに笑い、たわいもない世間話をして別れた。
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