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確かに1階はお絵描き教室なようで、幼稚園みたく窓にはたくさん動物の形に切られた紙がたくさん貼られ、生徒募集と大きく書かれていた。
「真っ暗だね」
エレベーターホールに行くと、真っ暗だった。
「今、この時間は誰もいないから。俺と優愛だけ」
「貸し切りって事か」
「うん。その方が落ち着くし」
花火が終わったら、私達のデートも終わり。最初で最後なんだ。
「わっ。確かにここならよく見えそう」
「優愛、始まる」
「うん」
屋上に着くとすぐに花火が打ち上がった。
「綺麗! 緑色の花火だ! 琥珀色はあるかな」
「それは科学的に難しい気がする」
「えー? そうかなぁ」
花火、久しぶりに見たな。こんなに綺麗だったんだな、花火って。
「あ、惑星型発見! ちっちゃくて可愛い」
「本当に綺麗だ。花火ちゃんと見たの久しぶりだから」
「河原よりずっといいね。すごく良い感じに見えるもん」
「ゆ、優愛」
「ん? 」
「ありがとう。一緒に行ってくれて」
「琥珀……」
「俺は優愛に会わなければずっと一人だった。花火がこんなに綺麗だった事も誰かの為に料理を頑張るのが楽しい事も、誰かと一緒に暮らす楽しさも知らないままだった。だから、ありがとう」
「私も琥珀にはいつも助けられている。本当に毎日楽しいよ。だから、こちらこそありが……」
気付いたら私は琥珀に唇を奪われていた。花火の音を聞きながらキスをした。
「唇はアウトなんだよ? 」
「知ってる。だから、した。優愛、俺は……優愛が好きだ。ずっと側にいて欲しい! 恋人として」
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