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彼氏が浮気した。付き合って5年目の夏の話でした。
「ただい……」
「ゆ、優愛!? 何でっ」
いつもより珍しく彼氏と同棲する家に早く帰った日だった。ベッドルームに行くと、知らない女の子と裸で抱き合う彼がそこにはいた。
ドラマでしか見た事のない光景。まさか自分にそんな日がやって来るとは思わなかった。
「最低っ!! ひどいよ、ひどいよ! 健介!」
私は健介に向かって本を投げつけると、すぐさま家を出て行った。
「ゆ、優愛!!」
苦しくて苦しくて、仕方がなかった。5年も付き合って、結婚だって意識し出した頃だった。
両親にも何回か会わせている。25歳になった私は健介と結婚するもんだと信じきっていた。
なのに、彼は簡単に私を裏切った。頭から離れてはくれない。彼が他の女の子に触れる姿。
「マスター、お代わりっ」
「お姉さん、そろそろやめといたら? それにここはただの居酒屋だ。マスターはやめてくれ」
「高いお酒頼みますからー! 今日は飲みたい気分なんですー!」
家に帰れない私は居酒屋で一人、ひたすら強い酒を飲み続ける。自暴自棄にもなる。大好きな人の裏切りにどうしたら良いか分からない。
「あーあ、私も浮気してやろっかな。やってられっかーっ!」
カウンターで一人、泣きながら荒れる私に店員は呆れ顔だ。
どうしよう? 今日はネットカフェに泊まる? それとも、カプセルホテル?
何で浮気された私がそんな狭い所に泊まらなきゃいけないんだろう……。理不尽な。
「失恋したの?」
いきなり隣に座っていた男の子が私に話しかけてきた。見た感じ大学生くらいの年齢だろう。
「まあ、そんなとこ。お姉さんくらいになるとね、色々あるわけよ」
「話、聞く」
「へ?」
「一人でお酒飲んでたって発散にならない」
タメ口で小生意気な子だ。でも、気付いたら私は彼にぶちまけてしまっていた。誰でも良いから話を聞いて欲しかったんだ。
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