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「5年……か。でもさ、そいつとしか付き合った事ないんだよね?」
「ま、まあね」
「結婚してから後悔する可能性ある。浮気するような男なら」
「で、でも! 健介が良かったの! 私は! 健介以外の男子に惹かれたりしない。なのに、あいつ……」
涙が止まらない。もう別れるしか無いんだろうなぁ、こうなったら……。
「あんたは何も悪くないよ。辛かったな……」
涙を流し続ける私の頭を彼は撫で続ける。私、情けないな。年下の男の子にこんな姿見せるなんて。
私は手にしていた日本酒を一気飲みする。だけど、その瞬間視界が揺らいだ。駄目だ、立つの辛いかも……。だんだん、意識が薄れていく。
「家に来いよ。帰れないんだろ?」
「う……ん」
もう、どうなっても良いや……。
私が次に目を覚ました時には朝になっていた。
「えぇっ!?」
隣には昨日話を聞いてくれた男の子が眠っていた。知らない部屋にいる!?
「ふ、服は着てる。わ、私……何て事を」
アラサーにもなって話を聞いてくれた若い男の子に持ち帰られるって。しかも、頭クラクラしてまだ立てないし。なんて大迷惑な。
「ん……お姉さん、起きた? 」
「ご、ご、ごめんなさい! 私は大変ご迷惑をおかけしました」
「へ?」
「話聞いて貰った上に家に泊まるとか。でも、ごめんなさい。途中から記憶が無くて……」
昨日は酔っててあまり気付かなかったけど。この子、美形だ。襟足まである長い黒髪、焦げ茶色の鋭い瞳、白く透き通った肌、特徴的に感じさせる口元のホクロ。いかにも儚げな美少年だ。
「立てる?」
「ま、まだ辛いです……」
「そ」
そう言うと、彼は部屋を出て行った。話聞いてくれたし、悪い人ではない? いや、だめだ。簡単に信用しては。でも、頭がくらくらしていて、まだ立ち上がるには辛すぎる。
「ん」
戻ってきた彼は水の入ったグラスを私に渡す。
「これは?」
「砂糖水。二日酔いに効くから作った」
変な物が入っていないだろうか?
「大丈夫。変な物は入れてない」
見透かされてる。
「あ、ありがとう」
私は砂糖水を一気飲みする。
「もう少し寝てて良い。朝ご飯作って置いとくから。俺は今日、午前大学に行かなきゃいけない」
「えっ? 土曜なのに?」
「補講……」
やっぱり大学生なんだ、この子。
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