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本当は嬉しくて仕方がない。だけど、だめだよ。だめなんだよ、琥珀。
「ごめんなさい。私は琥珀をそういう風に見られない……琥珀は弟みたいにしか見えないの。ごめん」
「優愛……」
ごめんなさい、琥珀。私は本当は琥珀が大好き。だけど、大好きで大事だから選べない。
私が側にいる限り、琥珀は留学しないって言い張るに違いない。琥珀は私に依存的な部分があるから。
私は琥珀の未来をめちゃくちゃにしたくない。彼には可能性があるんだから。
私達はそれ以上話さず、ぼーっと花火を見ていた。
「おやすみ、琥珀」
「うん、おやすみ」
その日の夜は私達は手を繋がず、背中を向けあいながら眠った。
翌朝、琥珀はいつもより早く家を出た。
「よし」
引っ越しの為に有給をとった私は朝食を食べてからすぐに荷物をまとめ始める。
「これでよし。あまり物は無いからね」
すぐに荷物の整理が終わると、鞄から便箋を出して琥珀への手紙を書き始める。
『琥珀へ。突然出て行ってごめんなさい。今迄ありがとう。琥珀のおかげで私は毎日本当に楽しくて幸せでした。昨日、琥珀に告白されて嬉しかった。だけど、ごめんね。気持ちに応えられなかった。私ね、琥珀の描く絵が大好き。絵を描いてる琥珀を見ているのが大好きだった。だから、琥珀。琥珀は自分の夢を追いかけて。もう会えないけど、私は琥珀の事を応援しているから。私がいなくてもちゃんとご飯食べてね。優愛より』
手紙を置いて、私は家を出た。
「バイバイ、琥珀」
涙を流しながら、私は琥珀の家を後にする。
もう二度と会えない。私、気付いたらこんなにも好きになっていたんだ、琥珀の事を。
ごめん、ごめんなさい。琥珀、どうか元気でね……。
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