記憶のなかの少年

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記憶のなかの少年

彼女は、アランの寝顔を眺めながら、記憶をたどっていた。 彼の寝顔は、なじみのクライアントに似ている。年もそのくらいで、、、イルミナのアランは20を過ぎているはずだと思うけど。 彼女は高級コールガールを生業にしていた。 まだこの道に入って浅いが、彼女はこの仕事はファンタジーと考えていて、仕事毎にファンタジーの世界で、別の人格の彼女が演技をする。そういう風にイメージして仕事をしていた。マネージャーに品のいい上客だけ回してもらった。 ある日の客は、17位の少年に見えた。他の上客よりもさらにクールで、マナーもよく、いい匂いがして、無口で可愛かった。何回かコールが掛かるにしたがって少し話した。 「お金持ちなのね?その年で一晩1,000ユーロ出せるんだから。」 「そう、この頃稼げるようになったから。」 「そんな若ければ、その顔なら、普通に女の子いくらでも見つかるんじゃないの?」 「僕は心を奪われたくないんだ。だから。」 彼は不思議な微笑みを見せた。 またある時彼は言った。 「ねえ、もし君が僕と外の世界で、自然な状況で会ったとしたら、僕を好きになってくれるかな?」 「待って、それって?」 彼は彼女を大きな瞳で見つめて言った。 「僕を好きになったら、この仕事辞められるのかな? なんでこの仕事してるの?」 「お金貯めてるのよ。」 「何のために?」 「アメリカへ行こうと思って。」 「そう?もし外の世界で僕に会ったら、どうする?」 「会って何が始まるの?」 「それは、会ってから考えようか、、、」 少年は寝てしまった。彼女は彼の髪を手で梳き、彼のほほにキスをした。 ソファで寝ているアランの額に手をやり、彼があの少年なのかどうか確かめようと、彼の前髪を掻きあげて、ふっと自分を嘲笑した。今どきの若い子はみんなこんな感じだ。そしてイルミナのアランが家にいるのだから、ちょっと一緒に寝てみようと、ソファの上に上がり、彼の腰に頭をのせて彼の足を抱いて横になった。 突然彼は飛び起き、口を押えて叫んだ。 「ねえ、バスルームどこ?吐きたい、、、、、早く。」 彼女は彼をバスルームに連れていき、吐くのを背中をさすって手伝った。長い間、彼は苦しんでいた。やっと収まって、タオルで彼の口を拭いた。 「大丈夫?」 「うん、ありがとう。あんな変な薬飲ませるからだよ。本当に死ぬところだった。」 そして彼はまたソファに横たわって、眠りに落ちた。
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