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吉村さんの家は小さいけれど牧場だ。
あそこはウチの何倍も広い。
広い草原を走り回れるし、牛やヤギに囲まれて賑やかに暮らせる。
きっとメルは幸せになれる。
・・・そうわかってはいるけど
本当はうちで飼いたい。
たった数時間一緒にいただけだけど、私はメルに情がうつってしまっていた。
だけど、メルの幸せを思うと吉村さんの所へ行くのが一番良いんだ。だって牧場で余生を送れるなんて最高じゃない?
私は自分にそう言い聞かせて、メルの頭を撫で続けた。
だけど・・・
メルの運命はここで大きく変わった。
「彩葉!」
「お母さん?吉村さんいつ迎えに来るって?」
「それなんだけど、吉村さん飼えなくなったって」
「えぇ?!」
「体調を崩して入院したらしいの。犬どころじゃないって」
「そんな・・・じゃ、メルはどうするの?」
「うちで飼うしかないわね」
その時タイミング良く、「ウオン!!」とメルが吠えた。
目をウルウル潤ませて私を見ていた。
尻尾をブンブン元気いっぱいに振って。
「あはは!メル!うちの子になる?!」
「ウオン!!」
かくして、メルはうちの家族になったのです。
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