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家に着くと、急いでメルの元へ走った。
「メル!!」
ドアを開けると目を疑う光景が飛び込んできた。
すっかり変わり果てた姿に衝撃が走る。
艶がない毛。痩せてしまって小さくなった体。
「メル、メル・・・!」
駆け寄っても目が開かない。
なんで?帰ってきたよ。
私だよ。彩葉だよ!!
母を見ると首を横に振った。
「・・・少し遅かったね。5分ほど前に息を引き取ったよ」
「そ・・・そんな・・・」
遅かった・・・
間に合わなかった。
ガクっと膝を落としてへたり込んだ。
「メル、ごめん・・・ごめんね・・・」
ゆっくりとメルに近づくと、まだ温もりの残るメルの体をギュっと抱きしめた。
もう動いてはくれない。
涙をペロペロ舐めてはくれない。
苦しかったね。辛かったね。
それでも
メルの体はあの日と同じ・・・
優しくて温かなぬくもりだった。
最後の最後まで、メルは私のためにぬくもりを残していてくれたんだ。。
メルの優しさが体温を通して伝わってくる。
「メル、メル・・・ありがとう・・・」
その時、頬に流れる涙をメルが舐めてくれた気がした。
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