メルとの出会い

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出会いは唐突だった。 「彩葉(いろは)!ちょっとついてきて」 日曜日、中学校も休みでお菓子を食べながらゴロゴロしていた私に、母がそう声をかけてきた。 「え?なに?」 「ちょっと人から頼まれてねー」 お菓子を口に詰め込んで、ムクリと立ち上がった私はスニーカーを履いて母の後ろを小走りでついていく。 「お母さんどこ行くの?」 「洋子さんちに」 「洋子さん?」 自動車の運転席に座った母は、キュルキュルとエンジンをかけた。私は助手席に座ってシートベルトをつけた。 「お母さん、洋子さんって誰?」 「私の同級生。犬を貰いに行くの」 「えっ!!犬?!」 動物好きの私は声を張り上げた。 犬が飼えるのかとテンションメーターがぐんぐん上がっていく。 そんな様子を母は知ってか知らずか、チラリと横目で私を見ると 「あ、うちで飼うわけじゃないのよ?」 と、期待と夢をあっさり一蹴した。 上がったテンションがひゅーんと音を立てて下がった。
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