a way of their life

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a way of their life

 どっかりと座り込んだ目の前のお嬢さんは、ふてぶてしく僕をねめつけた。……噂には聞いていた。「歴史上イギリス軍唯一の女性兵士」「イギリスを勝利に導いた戦場の鬼神」「苛烈な狂戦士」「嫁にもらえそうにない無愛想女」「性格の悪い不細工」などなど、彼女に関する噂は山のように飛び交っていた。でも僕はあまり気にしないようにした。会う前からクライアントに対して偏見を持ちたくなかったからだ。まだまだ新米の僕にとって彼女とこの第5小隊の方々は大事なお客さんだ。カウンセリングをする上で大事なのはクライアントとの信頼関係。好意的に、でも冷静に。そういう距離感が必要になる。  ……そうなのだけれども。あぁ、困ったな。どうしよう。僕がぼーっと彼女を見つめていると、怪訝そうな顔で見返される。確かに美人ではない。そして常に苛立ちと怒りから眉を潜めているのだろう、人相は悪く見える。けれど決して不細工ではない顔立ち。僕から見れば、彼女がいつも持っているその苛立ちも怒りも、何だか背伸びをしている少女のようで、可愛らしく思えた。あぁ、どうしよう。じりじりと胸が熱くなる。一目惚れなんて久しぶりだ。この職に就いたはいいけれど、結局自分の心なんてままならないものだ。僕は彼女に笑いかける。けど彼女は更に眉を寄せ、目を細くして僕を更に強く睨んだ。……気持ちが浮き立って仕方ないけど、そろそろ仕事をしないとね。
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