あんたって本当は

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エンバーディークラフト、それは一人から超大人数までが遊べる幅広い自由なジャンルであり、若い男子が多いバトルとは違い老若男女全てに愛されているゲームである。 だいたい世間に注目されるのはバトルの方だが、恐らく日本のプレイ人口自体はバトルよりも遥かに多いゲームだろう、またクラフトは遊びだけではなく仕事にも活用されている。 例えば建築なんかの仕事はデータで作ってから組み立てるし、当然映画のセット作成なんかにも使われたりする。 VRのゲームを作る時にも使われたりするし、変わったところでは手術の練習なんかにも使われているだとか。 それだけ人々の生活に根付いているゲームというのがこのエンバーディークラフトであり、ある意味ではゲームという枠すら超えているだろう。 テレビでは「仮にバトルが無くなってもクラフトは絶対に無くならない」とまで言われているほどだった。 「……なあ、キョウイチ」 「お、おう」 そして僕はこれからそのゲームを体験するのだが、そこには一つ、とてつもなく大きな問題があった、僕達は早速巨大な壁にぶち当たった。 それはこの閉鎖空間にいる四人に関係していることで、部屋の外から窓越しに覗いているカナタと目が合うと、僕は彼の笑顔から悲しみとこの状況に対する不安を受け取った。 「なんで僕達なんだ…!?」 エンバーディークラフト、そのコンテストに参加するのは男子二人女子二人の四人であり、カノンに選ばれたのは僕とまさかのキョウイチだった。 大事なことなのでもう一度言うが僕とキョウイチだった。 「なんでオレなんだ……」 いや僕は分かるがなんでキョウイチなんだ、指を差す前はずっとカナタの方を見ていたのに、どうして急にキョウイチを指差してしまったんだ。 それは友達であるミオさえも分からないようで、彼女は顔を引きつらせながら現場監督に確認を取った。 「ねえカノンちゃん本当に大丈夫?」 「大丈夫ーうふふーたのしいねー」 「たのしい?コンテストだよ?」 「うんーがんばろうねー」 「ああ…絶対何も考えてない…」 どうしようもならない、開幕から絶望的だ、一つだけ分かることがあるとすれば、たったのそれだけだった。
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