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これは恩を仇で返す汚い行為だが、僕はどのみち初期装備の性能を知らなければならなかった、だから怒られる事を覚悟してハンドガンの引き金を引いてみた。
それに最初についているデフォルト装備が、一撃で勝負を左右してしまうなんてまずあり得ないだろうと舐めていた、ゲームの初期装備というやつは弱いものだと相場が決まっているから。
「汚ねえぞクソ!」
しかしそれは一人用のゲーム等の話であり、直後にキョウイチが慌てて距離を離すと僕は察してしまう、この銃は決して弱いものではない、これはゲームてはなくスポーツなのだ。
そして銃口の先にエネルギー弾が生成されると、それは引き金を引いてから少し間を置いて、やがて強い反動と共に野球選手の投げるナックルボールのようにブレながら飛んでいった。
「あぶねえだろうがよォ!」
その見るからに威力が高そうなエネルギー弾はキョウイチの腹に突き刺さろうとしたが、目の前まできた次の瞬間、彼はそれをバッターのようにメイスで打つと、すぐそこの壁へと叩きつける。
回避方法は何も動いて避けるだけではないということだろう、更に強力な攻撃でこのステージの壁が崩れることも理解した、相手を怒らせてしまったが大きな収穫だ。
「あーもうやめだ!もうちょっと教えてやろうかと思ってたがもうやめだ!!」
そして恐らくこれさえ分かればエンバーディーバトルは成立する、キョウイチは授業が終わったことをわざわざ告知してくれると、崩れた壁の向こうへと逃げていった。
「こっからが本気の本番のマジバトル!!手加減なんてしてやんねえからな!!」
ここからが本番、互いの主張を賭けた、子供の安いプライドを賭けた本気の対決。
勝った方が何かを得る訳でもなく、単純に負けたくないから勝ちたいだけの、くだらない遊び同然の勝負事、それでも絶対に負けられない男子の戦い。
「ここで先生を超えてやる…!」
観戦者であるカナタはそんな二人を期待の眼差しで眺めていた、今日この日はきっと二人にとって、紡がれる歴史のはじまりとなる。
何故だかそんな予感が、胸の奥でざわついて仕方がないのだ、二人の才能が激突することに大きな意味がある、エンバーディーが決して交わらぬ水と油を繋げるのだと確信していたのだ。
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